前々回はソーシャルメディア上のクチコミの重要性とクチコミプロモーションについて、前回は様々なソーシャルメディアを網羅的に取り上げました(前回のコラムはこちら)。今回は、自社でソーシャルメディアを作る場合について取り上げ、企業とソーシャルメディアの付き合い方をまとめたいと思います。
企業が自社で抱えるソーシャルメディアとして代表的な例はブログだったといえるでしょう。多くの企業が社長ブログやスタッフブログを作り情報発信をしてきました。但し、どちらかというと企業から一方通行の情報発信が多く、ユーザーとの双方向のやり取りはあまり行われていなかったといえます。
しかし、近年、企業が自社でユーザー参加型のメディアを持つ例が増えつつあります。最も代表的なのは、コカコーラパーク( http://c.cocacola.co.jp/ )などに代表されるファンサイトという形です。商品やブランドのファンが集まる場所を提供することにより、様々なメリットが考えられます。
まずは、クノールの運営するコミュニティサイト「クノールクラブ(https://knorr-club.jp/pc/index02.php)」を例にとり、どのようなコンテンツを展開しているのかを見てみたいと思います。
■コミュニティ
クノールの商品を使ったレシピや感想などを投稿したり、投稿されたものにコメントをしたりすることで、ユーザーからの情報発信やユーザー同士のやり取りができます。
■クノールポイント
アンケートに答えたり、コンテンツを見たり、コミュニティに参加したりすることで、クノールポイントがたまります。ポイントを使うことで、オリジナルグッズプレゼントに応募できたり、アバターのアイテムをもらえたりします。
■アバター
ポイントを使うことでアバターをカスタマイズすることができます。
■スープができるまで
商品ができるまでの原料や工場の様子を、イラストや動画を用いて、わかりやすく親しみやすいタッチで説明しています。コミュニティでは、その感想を募っており多くの感想が集まっています。
サイト毎に違いはあるものの、上記のコンテンツはファンサイトにおける代表的なコンテンツと言えると思います。ユーザー参加型のファンサイトがどういうものか、イメージはつかめましたでしょうか。このようなファンサイトの展開は、大きく3つのメリットがあると考えられます。
1.好意的なクチコミの展開
前回、クチコミを管理することは難しいと言いましたが、ファンサイトという形なら、完全に管理することは無理だとしても、好意的な意見の割合は大きいと考えられます。否定的な意見が出てきても、自浄作用で少なくなっていきます。
2.参加者のファン化促進
例えば、「この調味料を私はこんな料理に使っています」というクチコミを書き、それが多くのユーザーからの賞賛を受けたり、メーカーから感謝のコメントをもらったりしたときに、その調味料に対する愛着(ロイヤリティ)は非常に大きくなると考えられます。商品やブランドのファンとして、サイト内で行動するにつれて、愛着がより強まっていくと考えられます。
3.時間と共に増えていくコンテンツ
ユーザーがコンテンツを作り上げていくため、コンテンツは時間とともに増えていきます。当然ユーザーの参加を促すようなキャンペーンを行ったり、サイトを管理したりするために手間やコストが必要になりますが、ゼロからコンテンツを企画して作る場合よりも安価な場合が多いのではないでしょうか。ユーザーの投稿の場合、テキスト主体のコンテンツになるため、SEO効果も増大していくと考えられます。
立ち上げ初期では、会員やコンテンツ量が少なく会員増の施策が必要となってきますが、例えば将来的に1000人のコアなファンのクチコミが、100万人のユーザーに影響を与えるのも不可能ではないでしょう。ファン層がユーザーの力で広がっていき、長期的にロイヤリティが向上していくような場所を持つことは、広告の効果が減少しつつある現状を考えると、非常に魅力的に思われます。
ここで、参考のため様々なファンサイトの特徴を挙げたいと思います。
商品のレビューを載せているのですが、モニター販売による発売前の商品のレビューが載っているところは、メーカーならではのコンテンツといえるでしょう。もちろんレビューを投稿することもでき、ポイントによる動機付けも行っています。
デジカメ写真の共有サービス「LUMIX CLUB ピクメイト」といった、パナソニック社の製品の特性を活かしたコンテンツがあるのも特徴といえます。
ホンダ車に関するクイズや、過去の名車の動画やエンジン音などファン向けのコンテンツが多くあるのが特徴です。「想い出投稿」のコーナーでは、ホンダへの思い入れの強い投稿が数多く見られます。「更新情報」のブログパーツや「車両情報」のブログパーツなど、複数用意していて、色などもカスタマイズできるようになっており、ブログパーツからのアクセスも多いのではないでしょうか。上記の2サイトと比べて、対象ユーザーが絞り込まれているのがわかります。
企業の担当者がファンサイトのコミュニティの中に入り込み、コミュニケーションをとるようなサイトも見受けられます。ユーザー同士のやり取りだけでなく、企業とユーザーとのやり取りも自然な形で行っており、コミュニティの活性化を図っています。
ソーシャルメディアとは、メディアの中に社会が形成されているメディアです。様々なステークホルダーがその中で双方向のコミュニケーションを行うため、完全にコントロールすることはできません。しかし、企業自身がファンサイトのような形でメディアを設置したり、企業がメディアの一員として入り込んだりすることで、ユーザーとの緩やかな対話を行うことができて、ユーザーに好意的に受け入れられる場合が多いといえるでしょう。
3回にわたってソーシャルメディアについて取り上げましたが、活用事例は本当に数多くあるので、ここでご紹介できなかった事例でも興味深いものが多いかと思います。ソーシャルメディアを使ったキャンペーンなどで気になったものがあれば、実際にアクセスして試してみるのがよいかと思います。締めくくりとして、最後にソーシャルメディア活用のポイントをまとめて終わりたいと思います。
企業のソーシャルメディア活用のポイント
・双方向のコミュニケーションを意識する
好意的な意見ばかりを見るのではなく、否定的な意見も見て、サービスの改善に取り入れること、そしてそういった姿勢を発信していくことも大事になってくるでしょう。
・クロスメディアによる展開を考える
TVCMにように認知に強みがあるメディアもあれば、ツイッターのようなクチコミの広がりに強みがあるメディアもあります。特性を活かした組み合わせを考えることで、ユーザーへの訴求は大幅に増すことでしょう。
・クチコミを促進する仕掛けづくり
ブログパーツ、HP内のツイッター投稿機能、などクチコミを促進できる機能は積極的に取り入れることを勧めます。もちろん商品自身に話題性があるのが望ましいですが、キャンペーンによって話題性を作ることも十分可能でしょう。
・適切な指標(KPI)を設定する
「キャンペーンサイトのPV」「ブログでのクチコミ数」「ツイッターのフォロー数」など、目的に合わせたKPIを事前に定め、モニタリングしていくのが重要です。特にメディアを設けて長期的にファンを獲得していく場合には、状況に合わせて改善策を考え、実行することが必要となります。
・運用体制についてガイドラインを定める
ツイッターやファンサイトなどは、ファンが多く集まる公共の場所といえます。商品の不具合などの緊急時に対応できないようでは、サイトや企業への信用も薄れてしまいます。様々なケースを想定しておく必要があり、その中では他部署との連携が必要なこともあります。事前に体制を整え、ガイドラインに盛り込むことが必要になってくるでしょう。